20人が本棚に入れています
本棚に追加
竜使いの娘(4)
トーコはお湯を温め直すと、カモミールティーをパパっと作り、テーブルの上、オズワルドの目の前に置いた。
その後、自分のお代わりの分も入れると、ゆっくりと席に着いた。
一方で、後ろから二人を見ているエドガーは、何だか不機嫌そうだ。黒光りしている顔から、眉間に皺を寄せているのが、何となく分かる。
「ほとんど知らぬ男を、躊躇無く、家の中に入れおって……。お前は無防備過ぎるぞっ!」
エドガーは、長年トーコと顔見知りだったので、まあ、身内のような気持ちになっていても、不思議ではない。
「エドガーが居れば、じゅーぶんっ、防犯になるじゃんっ。それに、木炭みたいな、変な色の髪と眼の女……、誰も相手になんかしないから」
「なっ……。ま、全くっ……、『神の化身』とされる誇り高き竜を、番犬扱いしおって……」
まるで喜劇のような会話だったので、オズワルドは、聞こえるか聞こえないか分からない程度の小声で、フッ……と笑った。
だが、トーコの言葉の一部に対して、何か引っかかるモノを感じていたため、彼は心の奥で、少しモヤモヤとしていたのだった。
「そーいや、アンタ……。確か、王族の血筋だったか?」
「あっ、はい。そうです」
「町よりも、ココは暮らしににくいと感じたことは、無いのか?」
「……そーいうのは、無いですね。とっても静かで、心が休まりますし……。あと、周りの方々からは、いい意味で特別扱いされていないので、少しだけ気が楽かもしれませんね」
「……そうか」
トーコの言葉を聞いて、さっきまで固い表情をしていたオズワルドは、穏やかに微笑んだ。
「あっ! 少し暗くなってきたかな?」
トーコが玄関のドアから、外の様子を確認すると、太陽が西の方角に沈み始めていた。にわか雨も止んでいるようだ。
「日の入り前には、戻らねーとな。……馳走になった」
オズワルドは、流し台の横に入れ物を置くと、早足で外に出た。
「いえ。短い距離ですが、お気を付けてっ!」
最初のコメントを投稿しよう!