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嫉妬する蓮音
部屋へ戻っても蓮音の機嫌は悪いままだった。
ソファに座って目を閉じ、腕組みをした蓮音は一言も喋らない。
こんな時はそっとしておくに限る、僕は蓮音の横に座って、同じように目を閉じた。
触れ合う肩から蓮音の熱が伝わってくる。
蓮音がカイルに嫉妬している、そう思うと嬉しくて、そしてそんな蓮音が堪らなく可愛い。
これまで女子に囲まれた蓮音に、僕はいつも嫉妬していた。
それは絶対知られてはいけない感情で、報われることのない気持ちだと思っていた。
そんな蓮音が、今は僕とカイルに嫉妬している。
そんな事を考えていると、いつの間にかニマニマと笑いが込み上げてきた。
「なに笑ってんだよ」
目を閉じていた蓮音はいつの間にか、僕を見ていた。
「別に笑ってないよ」
「ニヤニヤしてただろ」
「蓮音はなに怒ってんの?」
「怒ってない」
「怒ってるだろ」
「彪・・・・・カイルが好きか?」
「蓮音の方が好きだって分かってるだろ」
「彪、一緒に住もう」
「どこで?」
「ここでもいいし、そっちでもいい」
「ここに住んで、華さんに食事作ってもらうわけいかないだろ」
「だったら、お前のマンション」
「匠君が居るのに?」
「匠にここに住んもらうか?」
「華さんに匠君の食事を作ってもらうの?そんなことできるわけないだろ。それに匠君だって、嫌に決まってる」
「・・・・・お前は俺と一緒に住みたくないのかよ」
「・・・・・だって、無理だし」
僕だって、蓮音と一緒に住みたいと思わないわけじゃないけど、どう考えても良いアイデアは浮かばない。
匠君を追い出したくはないし、かと言って自分が出ていくわけにはいかない・・・・・
結局、今まで通り週末蓮音の部屋に泊まる事で落ち着いた。
それにしても、最近の蓮音は匠君にも同じ学部の友達にも嫉妬する。
朝の通学は勿論、ランチも帰るのも一緒じゃないと機嫌が悪い。
たまたま同じ授業では、僕の隣の席を速攻で確保する。
そして、女子が見ているにも関わらず、僕の耳元で囁くように喋る。
そしてくすりと意地悪く笑う。
こんな事がさらりとできるなんて、きっと蓮音は天性の人たらしなのかもしれない。
人目を気にして睨む僕に、ニヤリと笑った蓮音が素早くキスをした。
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