189人が本棚に入れています
本棚に追加
二人だけの時間
夏休みも直前になった頃、凛太郎の部屋で四人で食事をする事になった。
この前学食で彪が誘ってくれた時、あまり期待しないようにしていた。
期待してガッカリしたくないし、凛太郎の友達が僕とも友達になってくれるとは限らない。
そんな風に思っていた自分が恥ずかしかった。
彪や新名君は凛太郎と同じくらい、僕のことも友達だと思ってくれていた。
それがとても嬉しかった。
日本に来て、親しく付き合える友達ができるとは思っていなかった。
凛太郎を好きになったのも、その友達と仲良くなれたのも、僕にとってはどちらも大切な繋がりだった。
金曜日、授業が終わって凛太郎と一緒にマンションへ向かった。
始めて訪れる凛太郎の部屋は、彪とルームシェアしていると聞いていた。
部屋へ入ると、彪と新名が迎えてくれた。
「星轩 、いらっしゃい」
「彪、ありがとう」
「星轩 は好き嫌いはある?和食とかでもいい?」
「僕は何でも食べるよ。好き嫌いもないし、和食やイタリアも好きだから」
「そうなんだ、蓮音と二人でごちそするね」
「匠と星轩 は、後片付け頼むな」
「分かった、とりあえず星轩 に俺の部屋を見せてくる」
凛太郎がそう言って、僕を自分の部屋へ案内してくれた。
凛太郎の部屋は机と本棚とソファとベッドがあって、綺麗に片付いていた。
「綺麗にしてるんだね」
「星轩 が来るから、朝片付けたんだ」
「隣の部屋が彪の部屋?」
「そう、リビングとかバスルームとかは共有なんだ。殆ど彪が綺麗にしてくれるけどね」
「どうして彪とルームシェアしてるの?」
「このマンションは彪のお母さんのものなんだけど、一人暮らしには広すぎるからルームシェアする相手を探してたんだ。それで俺が手を上げたわけ。部屋代は無料だって言われて、助かってるんだ」
「そうなんだ」
「星轩 」
「なに?」
「キスしていい?」
凛太郎がベッドに座って、僕に手を伸ばしてそう言った。
そういえば、最近すれ違ってばかりでキスはしていない。
学食は一緒でも、キスしたり抱き合ったりする時間はなかった。
僕は凛太郎の隣に座った。
凛太郎の手が僕の肩を押した。
ベッドに倒れた僕を凛太郎が上から見下ろして、顔を近づけてキスをした。
柔らかなベッドに二人の体が沈んでいく。
いつもは暗い道の片隅で、誰かに見られる心配をしながら、早急にキスをしていた。
「星轩 、好きだ」
凛太郎はそういうと、ベッドの上に上がって、僕の上に覆い被さってきた。
そして貪るように唇を奪い、激しく舌を侵入させてきた。
怯えて縮こまる僕の舌を無理やり吸い出して、強引に舌を絡めてくる凛太郎。
口腔内の唾液を全て吸われ、代わりに凛太郎の熱い唾液を注ぎ込まれた。
今までになかったような乱暴なキス、しかしその荒々しさにときめいてしまっている自分をはっきりと自覚していた。
その時、新名の声が聞こえた。
僕達は慌てて、身体を離しベッドから起き上がった。
二人とも息が乱れていた。
荒い息を落ち着かせて、キッチンへ行くとテーブルには今夜の食事が並んでいた。
さっき迄の自分が恥ずかしかった。
最初のコメントを投稿しよう!