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新名からの提案
2人用には広いテーブルも、4人が食べるとなるとテーブルいっぱいに料理を並べる事になった。
2つしかない椅子と、各自の部屋から持ち出した椅子を並べて座る。
彪と新名が作った料理は和もあり、中もあり、洋もありの多彩なメニューが揃っていた。
4人で食べる賑やかな夕食は、どれもこれも美味しくて、夢中で食べながら会話も弾んだ。
こんな楽しい食事は、これ迄の自分の記憶には一度もなかった。
頼りになる友人2人と大好きな人と、一緒に食べる食事は想像以上に幸せな時間だった。
そんな事を思いながら、星轩 の顔を見ると、彼が涙ぐんでいるのが分かった。
「星轩 ・・・・どうした?」
「ごめん、すごく美味しい。それにこんなに楽しい食事、久しぶりだった。彪も新名も凛太郎もありがとう」
「星轩 、これからも一緒に食べよう。1人は寂しいもんね」
「彪・・・・・ありがとう」
両親が亡くなってから、ずっと1人だった。食べるのも寝るのも、寂しくても楽しくても誰に伝えることも共有する事もなかった。
こんな時間がまた来る事は二度とないと思っていた。
「星轩 、これからはずっとお前のそばに居る。俺も彪も新名も同じ気持ちだから、安心していいよ」
「凛太郎・・・・・ありがとう。凛太郎を好きになって良かった」
「匠、お前ほんとにいい恋人が出来たな」
「ほんとだよね、これからは星轩 を大切にね」
「そうだ、今夜は彪は俺のところに行くから、星轩 はお前のところに泊まればいいんじゃないか」
「彪、この部屋に星轩 を泊めてもいいか?」
「いいよ、匠君の部屋で一緒に寝たら」
「星轩 、どうする?」
「ほんとにいいの?僕も凛太郎と一緒に居たい」
「土日のバイトは夕方からだから、明日の朝もゆっくりだしな。今夜は泊まっていけよ」
新名の提案で星轩 と思いがけなく、一晩過ごせる事になった。
夏休みになったら・・・・・そう思っていたのに、意外と早くその機会が来た事が嬉しいような、戸惑うような、落ち着かない気持ちだった。
食事が終わって、彪が新名の家へ行って、2人で食事の片付けをした。
星轩 と並んでキッチンに立ち、食器を洗って片付ける。
何でもない日常のそんな事も2人ですると楽しかった。
星轩 と顔を見合わせて、洗った食器を片付ける。
2人だけでこんな風に過ごすのは初めてだった。
片付けが終わって、シャワーを浴びると星轩 は、俺のシャツとスエットを着て出てきた。
紅く上気した顔が艶めいて、いつもの星轩 よりずっと妖艶に見えた。
照れた顔の星轩 が堪らなく可愛くて、思わず抱きしめるとシャンプーの良い香りがした。
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