新名からの提案

1/1
前へ
/159ページ
次へ

新名からの提案

2人用には広いテーブルも、4人が食べるとなるとテーブルいっぱいに料理を並べる事になった。 2つしかない椅子と、各自の部屋から持ち出した椅子を並べて座る。 (あや)と新名が作った料理は和もあり、中もあり、洋もありの多彩なメニューが揃っていた。 4人で食べる賑やかな夕食は、どれもこれも美味しくて、夢中で食べながら会話も弾んだ。 こんな楽しい食事は、これ迄の自分の記憶には一度もなかった。 頼りになる友人2人と大好きな人と、一緒に食べる食事は想像以上に幸せな時間だった。 そんな事を思いながら、星轩 (シンシュエン)の顔を見ると、彼が涙ぐんでいるのが分かった。 「星轩 (シンシュエン)・・・・どうした?」 「ごめん、すごく美味しい。それにこんなに楽しい食事、久しぶりだった。(あや)も新名も凛太郎(りんたろう)もありがとう」 「星轩 (シンシュエン)、これからも一緒に食べよう。1人は寂しいもんね」 「(あや)・・・・・ありがとう」 両親が亡くなってから、ずっと1人だった。食べるのも寝るのも、寂しくても楽しくても誰に伝えることも共有する事もなかった。 こんな時間がまた来る事は二度とないと思っていた。 「星轩 (シンシュエン)、これからはずっとお前のそばに居る。俺も(あや)も新名も同じ気持ちだから、安心していいよ」 「凛太郎(りんたろう)・・・・・ありがとう。凛太郎(りんたろう)を好きになって良かった」 「匠、お前ほんとにいい恋人が出来たな」 「ほんとだよね、これからは星轩 (シンシュエン)を大切にね」 「そうだ、今夜は(あや)は俺のところに行くから、星轩 (シンシュエン)はお前のところに泊まればいいんじゃないか」 「(あや)、この部屋に星轩 (シンシュエン)を泊めてもいいか?」 「いいよ、(たくみ)君の部屋で一緒に寝たら」 「星轩 (シンシュエン)、どうする?」 「ほんとにいいの?僕も凛太郎(りんたろう)と一緒に居たい」 「土日のバイトは夕方からだから、明日の朝もゆっくりだしな。今夜は泊まっていけよ」 新名の提案で星轩 (シンシュエン)と思いがけなく、一晩過ごせる事になった。 夏休みになったら・・・・・そう思っていたのに、意外と早くその機会が来た事が嬉しいような、戸惑うような、落ち着かない気持ちだった。 食事が終わって、(あや)が新名の家へ行って、2人で食事の片付けをした。 星轩 (シンシュエン)と並んでキッチンに立ち、食器を洗って片付ける。 何でもない日常のそんな事も2人ですると楽しかった。 星轩 (シンシュエン)と顔を見合わせて、洗った食器を片付ける。 2人だけでこんな風に過ごすのは初めてだった。 片付けが終わって、シャワーを浴びると星轩 (シンシュエン)は、俺のシャツとスエットを着て出てきた。 紅く上気した顔が艶めいて、いつもの星轩 (シンシュエン)よりずっと妖艶に見えた。 照れた顔の星轩 (シンシュエン)が堪らなく可愛くて、思わず抱きしめるとシャンプーの良い香りがした。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加