好きで堪らない

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好きで堪らない

凛太郎(りんたろう)」 突然の呼び掛けに、胸がキュンと奇妙な音を立てた。 星轩 (シンシュエン)を抱きしめ目覚めた朝、目の前には大好きな人の顔が自分を見つめていた。 そのままぐったりと身体をあづけてくる重みを、心地よく陶然と受け止めた。 重なった肌の熱が、混じり合いながらゆっくりと下がっていく。 横向きになって星轩 (シンシュエン)と視線を合わせると、ちょつと照れくさそうな顔が俺を見た。 幸福と満足を浮かべた瞳に、同じものを浮かべた自分の瞳が映っていた。 愛しくて、堪らなく切なくなった。 星轩 (シンシュエン)の唇にもう一度口づけると、彼の瞳が潤み涙が溢れ出した。 「星轩 (シンシュエン)・・・・・」 「凛太郎(りんたろう)、ずっと一緒に居てくれるよね」 「どこへも行かない、ずっとお前のそばに居る」 「僕、このまま日本に居たい」 「何処へも行かなくていい、ずっと俺と一緒だろ」 卒業したら日本に居られなくなる事がわかっていても、今だけは忘れていたかった。 不安を掻き消すように、お互いの身体を抱きしめ合った。 ベッドを出て、星轩 (シンシュエン)と二人で朝食の準備を始めた。 向かい合って、パンとコーヒで簡単な朝食を済ますと、リビングのソファに座って二人でゲームをやった。 バイトが始まるまでの穏やかな時間を過ごす。 「バイトが終わる頃迎えに行くから、今夜も泊まるだろ?明日は俺も昼からバイトだし、星轩 (シンシュエン)と同じシフトだから一緒に行こう」 「泊まっていいの?」 「(あや)は日曜日の夜に帰ってくるから、大丈夫」 「うん、今夜も一緒に居られるね」 星轩 (シンシュエン)の顔が本当に嬉しそうな笑顔で、見ているだけで幸せな気持ちになった。
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