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夏休み
四人で二泊三日の旅行に行く事を、彪と星轩に告げた。
もちろん誕生日の事は内緒にして、親父の会社の社員用保養地へ行くと言う、簡単な説明だけにした。
社員用保養地という、無味乾燥な場所と言う印象を強くし、期待を持たせない作戦にしたのも、誕生日のサプライズをより大きく印象づける為だった。
社員用を使う為に、重永にも同行してもらうと言うのも、作戦の内だった。
前日は四人がマンションに集合して、一緒に夕食を食べ、旅行の準備を始めた。
四人で旅行なんて、みんな初めての経験で気持ちが浮き立つのがわかった。
海で遊ぶためのアレコレを鞄に詰め込み、話も弾む。
彪も星轩も楽しそうに、浮かれている。
二人の誕生日の為の特別な準備は事前に匠と済ませて、車に積み込み済みだった。
車は大きめのバンを用意し、夜の海辺で遊ぶ為の花火やローソクも用意した。
一泊目はホテルに宿泊し、翌日からの二日間は海沿いでグランピングしながらバーベキューを楽しむ。
匠と練りに練ったアイデアで、出発前から二人の驚く顔を思い浮かべてドキドキだった。
翌日は目が覚めると、部屋の外が何やら騒がしい。
ベッドに彪の姿は無く、自分一人で寝ていた。
部屋を出ると彪と星轩が、キッチンで何かを作っている。
声をかけようにも、二人の会話が賑やかすぎて、タイミングが見つからない。
「彪・・・彪・・・・・何してるんだ?」
「蓮音おはよう!星轩とおにぎり作ってたんだ、車の中で食べよう」
「朝ごはんは?」
「もう出来てるよ」
「お前ら、何時に起きたんだ?」
「5時起きだよね、星轩」
「星轩、匠は?」
「まだ寝てる」
三人の会話が騒がしかったのか、匠が部屋から顔を出した。
「うるさいな、なに喧嘩してんだよ」
「喧嘩じゃないよ、凛太郎顔洗って、早く朝ごはん食べよう」
「僕たち、おにぎり作ってたんだ」
「おにぎり?」
匠が不思議そうに俺の顔を見た、
なにも知らない彪と星轩が、気を利かせたつもりで、おにぎりを作ったのだと察した匠は、さも驚いた顔をして嬉しそうな顔をした。
「おにぎりか、美味しそうだな。早速出発して車の中で食べよう」
「匠君、これはお昼ご飯だよ。朝ごはんはできてるから早く食べて」
二人のはしゃぎ様に、匠も朝食を食べる為にテーブルに座った。
俺と匠の二人で朝食を食べる。
彪と星轩は、すでに朝食を済ませていて、俺たち二人の食器を片付けると、直ぐに出かける準備をする為に部屋へ戻っていった。
残された俺と匠は、あまりの手際の良さにしばし呆然とし、慌てて彪と星轩の後を追って、部屋に入った。
とりあえず準備は終わっていたので、用意したバッグを持って、地下駐車場へ向かった。
計画した俺たちよりも、彪と星轩が張り切りすぎて、俺たちは二人の後をついていく形になった。
車に乗り込むと助手席には匠、彪と星轩は後部座席に座った。
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