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自分の気持ちを
蓮音に言われたことを何度も頭の中で繰り返し自分に言い聞かせた。
「彪、匠の恋愛対象は女だ、知ってるだろ?好きになったらまたお前が辛くなるだけだ、だから諦めろ」
確かにそうだと思うし、それだからこそルームシェアを了解したつもりだった。
ノーマルの男を好きになって、悲しい思いをするのは二度とやめようと決めていた。
高校生の時、好きになった先輩から言われたあの言葉で自分がどれほど傷ついたか忘れたわけじゃない。
あの時も蓮音が居なかったら、きっと自分は立ち直れなかった。
自分が異常で変態だと言われたことが忘れたくても、忘れられなかった。
蓮音がそばに居て、男の人を好きになる事は異常な事でも、変態でも無いと何度も言ってくれた。
夢の中でも何度もその言葉を投げかけられ、夢から覚めて泣いてる自分に絶望し、生きていることさえ嫌だと思った。
それからは蓮音がそばに居て、僕を守ってくれた。
大学になって、高校の頃の自分を知る人はいなくなった。
それでも、いつ自分の秘密が知られるかと思うと不安だった。
蓮音だけが、自分の秘密を知る唯一の人で理解者だと思っている。
だから、蓮音の言う事はいつも正しいと思う。
自分の事を思って言ってくれた言葉に逆らう事は出来ない。
匠 凛太郎に誘われた時、嬉しいと思ったのは好きだからだけど、それ以上に映画を見たりランチに行ったりショッピングをしてみたいと思った。
恋愛じゃなくてもいい、友達でいいから一緒に居たかった。
だけど、もし自分が男しか好きになれないと彼が知ったら・・・・・彼も同じように、自分を気持ち悪いと思うのだろうか?
好きだと言う気持ちを隠してでも、彼と友達として付き合いたかった。
彼が女性が好きだと言うなら、それはそれで構わない。
ただの友達なら、それもありだと思う。
現に蓮音には彼女が居て、自分とは友達として付き合っている。
蓮音に恋人が居ても、自分達の友情にはなんの関係もない。
あれからずっと、匠君には会わないようにしてきた。
早く起きて朝食作り、自分の部屋で食べて大学へ行く。まるで彼から逃げているようだ。
自分の気持ちと考えを彼に伝えようと思った。
好きだと言う気持ちは無い、友達になりたいと言えばいいだけだ。
今度の日曜日の朝、彼と一緒に朝食を食べよう。
そして彼に友達になってもらおう。
あの日映画館から蓮音と一緒に帰ってしまった事を謝りたかった。
彼がどう思ったのか知りたかった。
折角誘ってくれたのに・・・・・彼は友達として誘っただけなのに、あんな別れ方をした自分を許して欲しかった。
そして改めて友達になってもらおう。
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