189人が本棚に入れています
本棚に追加
友達なら
日曜日の朝、彼が起きてくるのを待った。
朝食を作り、コーヒーを飲みながら一人で食べていると、彼が部屋から出てきた。
あれから彼の顔を見たのは一週間ぶりだった。
「おはよう」
彼は黙ったまま、ぼくを見ていた。
「朝ごはん食べる?」
「おはよう、食べる」
彼がそう言ってくれた事が涙が出るほど嬉しかった。
キッチンへ立って、パンをトースターにセットしながら、涙が出てしまう。
コーヒーをカップに入れて、彼に持って行かなきゃいけないのに、泣いてる顔を見られたくなかった。
歯を食いしばって涙を止めようと思うのに、いくら頑張っても止まってくれなくて、鼻をすする音が聞こえそうで、思わず顔を洗った。
「彪」
彼の声が聞こえても、振り向けない。
彼がキッチンへ来て、焼けたパンとコーヒーをテーブルまで運んでくれた。
大きく息を吸って、気持ちを落ち着けて彼に言いたかった事を言った。
「匠君、この前はごめん」
「気にしてないよ、泣くほど気にしてたのか?」
泣いた事には気づかれてたけど、必要以上にそのことに触れないでいてくれた。
「まだ友達だと思ってくれる?」
「もちろん、彪とは友達だろ」
「今度はランチに行こうね」
「そうだよ、美味しいハンバーグの店に行くつもりだったのに・・・・・今日行くか?」
「ほんと?いいの?」
「バイトは夕方からだから、大丈夫」
彼が普通に言ってくれた事が嬉しかった。
自分の事はまだ言えないけど、彼とは友達だからいつか、自分のことをきちんと言うつもり。
そして彼がその事をどう思うか、彼がどう思ってもそれが彼の気持ちなら、受け止める。
彼なら、責めるような言葉もひどい言葉も言わないと信じている。
彼の事は好きだけど、友情を壊してまで手に入れようとは思わない。
朝食を終えて、先週と同じように二人で出かけた。
デパートを見て、スニーカーを買って、美味しいハンバーグの店で二人でハンバーグを食べた。
僕は和風ハンバーグで彼は大盛りチーズハンバーグだった。
僕の嫌いなブロッコリーを彼にあげて、彼の苦手なニンジンを僕がもらって食べた。
食後のデザートのアイスクリームは、僕がチョコで匠君がバニラだった。
夕方バイトが始まるまで、ぶらぶらと歩き回って、匠君はバイトへ僕はマンションへ帰った。
この一週間が嘘のように楽しい一日だった。
最初のコメントを投稿しよう!