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日曜日
彪に逢いたいと思いながら、どうしていいのかわからないまま一週間が過ぎた。
映画に行ってから、今日まで一度も顔を合わせていない。
今日は日曜日、一緒に朝ごはんを食べた先週の朝を思い出す。
そんな事を思いながら、部屋を出た俺に彪が待っていたように声を掛けた。
一週間前と同じように朝食に誘ってくれた。
パンとコーヒーを用意する彼の背中が泣いていた。
なんて言えばいいのか分からず、それでもなんとなく彼の気持ちが伝わって、自分でも胸が苦しかった。
それでも、彼と普通に話せるのが嬉しかった。
これからも友達として付き合っていけると思った。
彼の事を新名に聞いた事は言わなかった。
彼がその事に触れない以上、俺は知らないふりをする事に決めた。
彼が男しか好きになれないとしても、友達として付き合っていけばいい。
彼から好きだと言われたわけじゃ無いし、彼の方も友達だと思っているなら、何の問題もない。
新名の心配はわかるけど、彪が友達だと思ってくれるなら、その気持ちを大事にしたいと思った。
先週と同じように、二人で出かけて好きなものと嫌いなものをシェアしながら、ランチを食べた。
仲のいい友達同士、そんなふうに食事をする事が楽しかった。
これまで一度も感じたことのない、優しい時間だった。
彼を友達として大切にしたい、彼が嫌な思いや悲しい思いをする事がないように、護りたいと思った。
きっと今の俺は新名と同じ気持ちだと思う。
あの日新名の言った事が分かった気がした。
彼の買い物に付き合い、街をぶらついて別れた。
普通に男同士の友達なら誰でもするような事を普通に出来た事が嬉しかった。
バイト中、早く部屋へ戻りたくて堪らなかった。
恐らく彼は寝てるだろうけど、彼と同じ部屋に居ると感じるだけで良かった。
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