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突然の奇跡
高校卒業と同時に始めた一人暮らしのマンションはファミリータイプの3LDK。
こんな広い部屋に一人で住むのは勿体ない。
そこで考えたルームシェア・・・・・
僕に起こった突然の奇跡・・・・・
自分の引っ越しが終わって三日目、彼が部屋へ来た。
ドアを開けると、彼が居た。
一瞬時間が止まった・・・・・そんな僕に気づきもせす。
彼が嬉しい声を上げた。
「ワァ〜広っ!俺、匠 凛太郎」
「僕は松木田 彪」
「あれ!お前同じクラスじゃなかった?」
「そうだよ」
「良かった。ほんとに部屋代タダでいいの?」
「うん、その代わり電気とか水道とかは折半だけど・・・・・」
「もちろん、OK!それにしても広くて快適だな。俺はどの部屋を使えばいい?」
「一番奥の部屋を使って、それと約束して欲しい、友達や女性を連れてこないって」
「わかった、約束する。それだけ?」
「うん、あとはお互い自由にしよう。干渉は無しで・・・・・」
彼は高校のクラスメイトだった。
クラスの中でも、女子に人気の彼はいつも女子に囲まれていた。
羨ましいとは思わなかったけど、彼の顔は自分の好みの顔だった。
だからと言って、女子が好きな彼を好きにはなれなかった。
例え好きになっても、そんなことがバレたらなんて言われるかわからない。
気持ちが悪いとか、近寄るなとか、男は無理とか・・・・・そんなことを面と向かって言われたら、きっと自分は壊れてしまう。
彼のプライベートには女子が必須で、一人暮らしの理由も恋愛だろうと推測した。
朝帰りや外泊も、初めから自由だと言っておけば気にしなくていいし、彼も気を使わず済むだろうという、僕なりの配慮だった。
例え一緒に住むと言っても、彼と特別になったわけでも、友達や親友になった訳でもない。
ただのルームシェアの相手!
だから、何があっても気にしない、そう自分に言い聞かせた。
「あっ、それと食事は各自で、片付けはちゃんとやってね」
「OK、でも多分俺は部屋では食べないと思う」
「そう」
やっぱりそうだ、それならそれで気は楽だ。
彼が誰とどこで食事しようと俺には関係ない。
「掃除はしなくていいからね、自分の部屋はお互い自己責任で」
「風呂とかトイレはいいのか?」
「そこは、3日おきにハウスキーパーが来るから大丈夫。使った後適当にシャワー掛けてくれればいいよ」
「そうか、わかった」
「何か聞きたいことある?鍵は渡したし、オートロックの番号も言ったよね」
「・・・・・ない」
「じゃぁ、よろしく」
「お前のこと松木田じゃなくて彪って呼んでいいか?」
「・・・・・うん・・・・・いいよ」
「俺は?」
「君は・・・・・匠君で・・・・・」
「たくみ君・・・・・凛太郎とは呼ばないんだ」
「ちょっと、呼びにくいかな・・・・・」
「そうか・・・・・じゃ、よろしくなあや」
彪・・・・・そう呼ばれて、心臓が跳ね上がった。
男子が好きだとは言っても、付き合ったこともましてや名前で呼ばれたこともなかった。
顔も耳も首も真っ赤になったのがわかった。
彼に気付かれないように、そう願いながら自分の部屋へ戻った。
友達でも親友でもない、ただのルームシェア・・・・・そう何度も自分に言い聞かせる。
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