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マンション事情
このマンションは母のもので、母の弟が三年住んでいた。
その弟が海外赴任で出て行った後、僕が住むことになった。
空き部屋のままより、誰かが住んだ方が良いという理由だった。
叔父は独身だったのに、この広い部屋に一人で住んでいた。
いくら叔父が大人で、僕が未成年でも広すぎる部屋は寂しすぎた。
そんな僕に叔父が言った。
「一人が嫌なら、彼女でも誘えば良いじゃないか」
僕に彼女が居ないと知って、わざとそんな冗談を言う。
叔父は僕が女性に興味がないことを知っている、親友の新名 蓮音と叔父だけには自分が好きになるのは男の人だと話した。
それは、叔父もそうだから・・・・・
「それか、ルームシェアでも良いんじゃないか」
「ルームシェア?」
「気の合うやつと一緒に住むルームシェア、聞いたことないか?」
「・・・・・」
「単なる同居人だから、気を遣わない奴を見つければ、一人よりはいいだろ」
「でも、他人と一緒に住むのは・・・・・」
「これだけ部屋があれば、例え他人でも気を使う必要はないんじゃないか、もちろん気に入った奴が条件だけどな・・・・・」
「そうかな・・・・・考えてみる」
そうやって、渋々自分を納得させて、始まったルームシェアだったが、まさか彼がくるとは思っていなかった。
彼はたまたま部屋探しの途中で、ルームシェアの話を聞いたと言っていた。
彼の実家は大学とそう遠くないはずだった、それでも一人暮らしがしたいのは、自由に暮らしたかったのだろう。
彼なら、友達にも女性にも不自由は無い、自由を謳歌して大学生活を送る為の一人暮らし。
両親を説得する為に、部屋代無料は願っても無い条件に違いなかった。
相手が同級生だろうと、そんな事を気にする奴じゃ無い。
彼にとって最適な同居人になろうと決めた。
彼の荷物を運び込んで、ルームシェアが始まった。
荷物といっても、服と机とベッドだけだったが、彼の部屋のクローゼットは満杯になる程大量の服だった。
高校時代は制服だったから、私服の彼は見たことがない。
休みの日はおしゃれな私服で出掛けていたのだろうと、推測された。
身長も高く、体格のいい彼なら何でも着こなすだろう。
その上、文句なしの美系とくれば恋人が居ないはずがない。
噂通りのモテ男なのだ・・・・・知ってたけど・・・・・
日々新名 蓮音に揶揄われながらも、毎日は無事に過ぎていた。
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