191人が本棚に入れています
本棚に追加
不思議な同級生との快適同居生活
松木田 彪はクラスの中でも、ある意味不思議な存在だった。
誰かと群れることもなく、だからと言ってボッチかと言うとそうではなく。
いつも一人で静かに本を手にしていた。
クラスのみんなが憧憬と冀望の眼差しを向けながら、話しかけたくても躊躇し気にしないふりをしながら気にしていた。
怒っているわけでもなく、機嫌が悪いわけでもなく、かと言って周りを気にしているふうでもなかった。
たまに彼が微笑むとそれだけで、みんなの気持ちが和んだ。
本人が気が付かないだけで、彼の一挙手一投足にクラス中が翻弄された。
上品で慎ましやかで近寄りがたい美しい人、そんな感じだった。
そんな中、唯一彼のそばに居ることを許されたのが新名 蓮音だった。
彼だけが松木田 彪に話しかけられる存在だった。
子供の頃から彼のそばに居て、幼馴染から友達となり親友となった男!
彼もまた、クラスの中で稀有な存在だった。
スポーツも成績も群を抜いて優秀で、男女を問わず彼に近づきたがった。
誰にでも友好的な彼は醜聞も多く、真意のほどはわからないが人気がある事だけは間違いなかった。
彼のプライバシーをはっきりと知るものはなく、噂だけが先行した。
莫大な資産を誇る財界人の息子だとか、見目麗しさは母親が女優だからとか、忙しい両親に放任された孤独な奴だとか・・・・・
口さがない噂を気にするでもなく、同級生は元よりいつも先輩後輩に囲まれていた。
そんな彼も松木田 彪だけには、特別な思い入れを持って接していた。
二人の関係は誰もが認める特別だった。
そんな松木田 彪と、ルームシェアする事になった。
学費以外は自分で何とかすると、啖呵を切って家を出たのはいいが、バイドだけで部屋代まで賄うのは無理があった。
そんな時、偶然耳にしたルームシェアの話、しかも部屋代は無料だと言う。
願ってもない話に、直ぐに連絡を入れてもらって、訪れたマンション。
そこに居たのは、あの松木田 彪だった。
まさかとは思いながら一応自己紹介をしてみたが、間違いなく同じクラスに居たアイツだった。
よく知らない同級生とは言え、部屋代無料は魅力だ。
最初のコメントを投稿しよう!