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二人の朝
目の前には見慣れた親友が、恋人の顔をして眠っていた。
素肌のぬくもりに抱かれ本当に幸せな朝、ただそこにいるだけで、彼の周りにだけ光が集まっているかのように明るく眩しい存在だった。
ずっと彼が欲しかった、自分のものにしたくて堪らない存在だった。
我慢して諦めて親友としてそばに居続けた。
絶対無理だと思っていた人を手に入れた。
カーテンの隙間から、明るい日差しが差し込む部屋の中、艶やかな逞しい身体を撫でた。
額に張り付いた髪をそっとかき上げて、その額にキスをした。
長い間ずっと見てきた顔だからこそ、胸がときめき、たまらなく愛しかった。
「蓮音・・・・・好きだよ」
もう一度キスをして、バスルームへ向かった。
服を着替えて母屋へ行くと、華さんが朝食の準備をしていた。
二人分の朝食をトレイに乗せて、部屋のテーブルに並べた。
蓮音はコーヒーを自ら淹れる。
蓮音こだわりの粉とドリッパー、ペーパーフィルター、コーヒーカップを準備した。
寝室へ行くと、今もまだスヤスヤと眠る蓮音が居た。
ベッドに腰掛けて、蓮音の頬を撫でた。
「蓮音、起きろ」
身じろぎをして、伸ばした腕が僕の頭を引き寄せた。
柔らかな唇が額に触れた。
「彪、おはよう」
「おはよう」
「俺、お前の夢に出れるか?」
「うん、蓮音しか出てこないよ」
「全部俺が上書きしてやる」
「そんな事気にしてたんだ」
蓮音の気持ちは全部わかってた、夢で 琉空 の名前を呼んだときから、蓮音はずっとその事を気にしてた。
そんな蓮音が堪らなく愛おしい。
「蓮音、初めてじゃなくてごめん」
「ばーか!そんな事思ってない。俺にとっていつでもお前は特別だったんだ」
「蓮音、僕のことずっと待っててくれてありがとう」
蓮音が僕を抱きしめた。
広い胸に顔を埋めると、蓮音の匂いがした。
それは僕に心地良い安らぎと喜びをくれた。
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