カイルと重永さん

1/1
前へ
/159ページ
次へ

カイルと重永さん

シンプルな装いだからこそ、蓮音(れんと)のスタイルの良さがひときわ際立つ。 朝食を終えた僕たちは、カイルに会いに重永さんの部屋へ向かった。 玄関の前でカイルの名前を呼んだ。 専用の出入り口から飛び出してきたカイルは、すぐに僕の肩に両脚を乗せて立ち上がった。 この前と同じように、顔を舐め始めたカイルのせいで、僕の顔はベトベトになった。 そんなカイルを重永さんが後ろから羽交締めにすると、大きな声でカイルに言った。 「カイル、辞めなさい」 カイルは僕の肩から脚を下ろすと、重永さんの隣に座った。 あれ程興奮していたカイルが、嘘みたいにおとなしく座っている。 それでも、ハァーハァーと舌を出して荒い息は続いている。 「(あや)君、カイルは君を見ると発情するみたいだな」 そう言って、豪快に笑う重永さんは男らしくてカッコよかった。 「重永さん、カイルは雌ですか?」 「いや、雄だ」 「・・・・・雄なのに僕に発情するんですか?」 「雄だからじゃないか」 重永さんが意味深な顔で僕を見た。 僕と重永さんの会話を笑いながら聞いてた蓮音(れんと)がカイルを呼んだ。 でも、カイルは動かない。 重永さんの横で蓮音(れんと)の顔を見ているのに、動こうとしなかった。 「(あや)、お前が呼んでみろよ」 「カイルおいで」 カイルの身体がピクリと動いたと同時に走り出し、僕の肩に両手を乗せて立ち上がった。 その勢いで、僕は芝生の上に仰向けに倒れた。 その時、蓮音(れんと)の力強い腕がしっかりと抱き留め、そして抱きしめた。 振り返るとなんとも言えない顔の蓮音(れんと)と目が合った。 「(あや)、帰るぞ」 蓮音(れんと)の顔はどう見ても怒っていた。 重永さんがカイルを呼んで、大きな声で笑った。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加