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女現る
授業が終わって構内のカフェへ向かった。
一緒に帰るために、早く終わった方はカフェで待つことになっている。
いつものカフェに入ると、学生の姿はなく閑散としていた。
店内の奥の窓際の席に着いた。
アイスコーヒーを注文して、パソコンを出して今日の講義のレポートを始めることにした。
構内のカフェやレストランは、学生のためにどの店もWi-Fiが繋がるので、こんな時は時間を無駄にしなくてすむ。
冷たいコーヒーを飲みながら、パソコンに向かっていると、僕の前に女子が座った。
空いてる席はいっぱいあるのに、何故そこに座るのか・・・・・顔を上げて相手を見ると、彼女は僕を睨むように見ていた。
知った顔でもなく、どうしてそんな顔で見られるのか分からない。
「君、だれ?」
「私松嶋 彩奈って言うんだけど、知らない?」
知らない?と言われても、女子の顔なんてよく見てないし、クラスの子でも無さそうだし、一体僕とどこに接点があるのか、皆目見当がつかない。
「知らないけど」
「あなた、蓮音の友達でしょ」
「そうだけど・・・・・」
「私のこと聞いてないの?」
「聞いてない」
女の態度には、知ってて当たり前と言う態度があからさま過ぎてムカついてきた。
僕は女子には興味はないけど、決して嫌いとか嫌悪しているわけでは無い、可愛いと思うし優しいとも思うけど、どう見てもこの女は好きになれそうになかった。
「私、蓮音と付き合ってるんだけど」
出た!こんな女の一人や二人出てくるだろうとは、思っていた。
「いつの話が知らないけど、だから何?」
「最近、貴方が彼に付き纏ってるから、私との時間が無くなったんだけど。いい加減離れてくれない」
「僕は付き纏ってなんかいないよ」
「だったら、どうして朝も昼も一緒なのよ」
「君には関係ないだろ」
「関係あるから言ってんの」
どっちかというと、蓮音が僕に付き纏ってる、と言ってやりたいけどまぁここはやり過ごすことにした。
「最近朝も昼も帰りもずっと離れないじゃない。今日だってそうでしょ、彼の帰りをここで見張ってるんでしょ」
「見張ってる?僕ストーカーじゃないから失礼なこと言うな」
「ストーカーみたいなもんでしよ」
蓮音が来れば、直ぐに終わる話なのに今日に限って遅い。
「悪いけど、僕レポート書かなきゃいけないから邪魔しないでくれる」
「分かったわよ、どうせここで待ってても蓮音は来ないわよ」
「別に僕は蓮音を待ってるわけじゃないから」
そう言うと女はテーブルをコップが跳ねるほど叩いて、出て行った。
蓮音が散々女と付き合ったのは見たけど、趣味が悪すぎる。
いくら、フェイクだとは言え相手を選べと言いたい。
あんな女にも、振りとはいえ甘い顔や甘い言葉を囁いたのかと思うと猛烈に腹が立ってきた。
蓮音が来たら、一言言ってやろうと待ち構えているのに、なかなか蓮音は来なかった。
コーヒーも飲み終え、レポートも仕上げた頃やっと蓮音が来た。
ハァハァと息を弾ませ、いかにも急いできたと言う感じがわざとらしく思えた。
いつもなら、そんな事は微塵も思わないのに、今日はあの女のせいで、蓮音のやる事にことごとくムカついた。
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