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蓮音の事情
いくら彪に言われても、そんな女は記憶になく名前を聞いてもわからなかった。
松嶋 彩奈が、何年でどこの学部かも分からず、方をつけろと言われても探しようがない。
とは言え、このままでは彪と話すことも、食事をすることも出来ない。
怒ったアイツは始末が悪い、納得するまでは絶対許してくれないだろう。
可愛い顔して、彪は意外と頑固だ。
だけど、そんな彪も可愛くて、このまま無視されては堪らない。
大学に入学してから半年、思いつく女に当たってみても、そんな女はどこにも居なかった。
高校時代まで遡るとなると、相当な人数になるが仕方がない。
うろ覚えの女性達に松嶋 彩奈の名前を聞いてみた。
その中の一人が思い出したように口を開いた。
「その名前覚えてる、確か2年の時転校したはず」
「俺、よく覚えてないけどどんな子だった?」
「蓮音君に夢中だったわよ、私はデート出来るだけで嬉しかったけど、彼女はデートだけでは満足しないって言ってたわよ」
「デートはしたんだ・・・・・」
「覚えてないの?2年の時に告白してデートしたって喜んでたわよ。でも、その後貴方が他の人ともデートしてるって怒ってた」
「俺はあの頃、特定の恋人は作らないって宣言してたよな、それでもいいって奴だけデートしてたはずなんだけど・・・・・」
「そうそう、私はそれでも良かったけど、彼女はそれだけじゃ嫌だったんじゃない」
「そんな・・・・・困ったな。彼女はどこに居るんだろ」
「彼女と同じクラスだった子に聞いてあげる」
「頼むよ、俺その子と話しつけないといけないんだ」
今は彼女だけが頼りだった。
なんとしても、その女を探し出し話を聞かなきゃならない。
「相当困ってるみたいね、分かったら連絡する」
まさか、2.3回デートした相手に執着されるとは思ってもいなかった。
しかも、転校した子がどうして彪にあんな事をわざわざ言いにきたのか・・・・・俺が彪と付き合い出して、まだ一月も経っていない。
と、言う事は結構そばに居るのかもしれない。
とは言え、彼女からの連絡を待つことにした。
その間、彪とは会う事はもちろん、話すことも、ランチを食べることも出来なかった。
構内で見掛けるだけの彪は、自分からどんどん離れて行くようで怖かった。
他の人に笑いかける顔が頭から離れず、無視されることが堪らなく辛かった。
例え、自業自得だとは言え、好きでもない女と付き合った自分が悪いと思うしかない。
誰かを好きだと思う気持ちを、軽く考えた自分を反省した。
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