女の正体

1/1
前へ
/159ページ
次へ

女の正体

彼女に会って一週間が経った時、やっと彼女からメールが届いた。 授業が終わって、待ち合わせのカフェへ行くと、彼女の他にもう一人の女性が一緒だった。 連れの女に見覚えはなく、軽く挨拶をして対面の席に座った。 「蓮音(れんと)君、彼女が松嶋 彩奈(まつしまあやな)さんよ、思い出した?」 思い出したかと聞かれて、彼女の顔をまじまじと見たけど、全く覚えていなかった。 「悪いけど、いつ頃逢った?」 「高二の時、私がデートしてって言ったら、その日デートしてくれたじゃない。忘れたの?」 「・・・・・ごめん、デートしたのは一回だけ?」 「そうよ、その後直ぐに私が転校したから、貴方からのメールも電話も受け取れなくて・・・・・ごめんね!心配してたでしょ。でも、大学は同じところにしたから、もう大丈夫よ」 ごめんね、心配したでしょと言われても、電話もメールもした覚えはないし、彼女の言ってることがいまいち、よく分からない。 そもそも、俺はメールをほとんどした事がない。 (あや)と付き合うようになってからも、たまに必要最小限の短いメールを送ることはあっても、電話をかける方がずっと早いし楽だと思っている。 この女の話は、どう考えてもおかしかった。 「ところで、君はどうして(あや)に合ったんだ?」 「あら、彼が貴方のそばから離れないから、貴方は私とデートも出来ないんでしょ、だから彼にはっきり言ってやったのよ。もう大丈夫よ、いつでもデート出来るから」 「悪いけど、俺、デートする気もないし、そもそも君と付き合う気はないから」 はっきりと言ってるにも関わらず、女は平然としていた。 「何照れてんのよ。私が知ってる事あの人に全部言ったからもう気にしなくていいわよ。貴方の部屋のソファも私が選んだって言ったら変な顔してたわ。それに彼、その日は他の男の人と一緒だったわよ」 「それいつの事?また(あや)に逢ったのか?」 「そうよ、おととい逢ったわよ。帰るところだったみたい」 「あのさ、いい加減にしろ!俺はお前と付き合ったこともないし、これからも付き合う気はさらさら無いから!それにお前、俺の部屋に来た事ないのになんでソファの事知ってたんだ?誤解する様な事言うなよ」 「ソファの事、貴方が電話で話してるの聞いちゃった。だから、ちょっと言ってみただけなのにさ、彼ったらショックだったみたい」 「いい加減にしろ!二度と(あや)に会うなよ。俺とお前は関係ない、付き合ってるなんて二度と言うな」 「蓮音(れんと)・・・・・」 余りにも無神経で図々しい女の発言に心底腹が立った。 これ以上話すのも無駄な気がして、俺は(あや)のマンションへ向かった。 どうしても、この誤解を解かなければ、(あや)の信用を失いそうで怖かった。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加