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匠君の彼
学食で匠君を見かけてからも、直接匠君に彼の事を聞くことはできなかった。
ただの学友かもしれないし、一緒に食事をしていただけかもしれない。
匠君が話してくれない以上、自分から聞くのは躊躇われた。
蓮音が集めた情報では、彼は同じ大学の社会学部の一年生だった。
社会学部は社会問題や流行など教育や福祉などの社会制度、環境問題や災害、情報化社会、国際社会と幅広く、アイドル論などのサブカルチャーなどを学ぶ。
海外からの留学生は様々な難関を突破しなければ入学許可は降りない。
日本留学試験(EJU)は勿論、日本語能力試験(JLPT)も合格しなければならない。
EJUは日本の大学等での勉強に対応できる日本語力であり、JLPTは、一般的な日本語能力の測定を目的としている。
EJUには記述問題があるが、JLPTにはなく一方、JLPTには言語知識(文字・語彙・文法)を問う問題があるが、EJUにはない。
どちらも必須となる為、相当な言語能力が必要となり彼がどれ程優秀かわかる。
彼と匠君は、彼とどこで知り合ったのだろう。
そのあとも何度か二人でいる所を見かけ、思い切って匠君に聞いてみることにした。
「匠君、いつもランチ食べてる人と付き合ってる?」
「見てた?」
「学食でよく見かけるから、蓮音とそうなのかなって話してたんだ」
「付き合ってる訳じゃないんだけど・・・・・」
「彼はどんな人?すごく綺麗な人だね」
「あいつは中国からの留学生で李 星轩 って言うんだ。社会学部の学生で、俺と同じバイトしてて、そこで仲良くなった」
「そうなんだ、バイトが一緒だったんだ。好きなの?」
「マァな!アイツすごく勉強熱心で、真面目なやつなんだけど、あいつと居ると楽しくてさ。なんかずっと一緒に居たくなるんだよな」
「良かったね。彼も匠君の事好きなのかな?」
「・・・・・それは、聞いた事ないから分からない・・・・・多分、嫌われてはいないと思う」
匠君はそう言うと少しだけ、不安そうな顔になった。
「でも、学食で見た感じじゃ二人ともすごく楽しそうだったよ。彼も匠君の事好きだといいね」
「うん」
「今度、僕達にも紹介してよ」
匠君がとても嬉しそうな顔をした。
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