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李 星轩君
彼が初めてバイト先のカフェに来た時、彪に似てるなと思った。
顔がそうだと言うわけじゃなく、声とか話し方とか彼の醸し出す雰囲気が似ていた。
だから、自然と彼に興味を持って話しかけた。
彼は中国からの留学生で、李 星轩 。
話をする内、彪と似ていると言うより、彼自身の魅力に夢中になっていた。
真面目で勉強熱心で、それでいてユーモアがあって日本語も上手で、話していて時間を忘れるほど楽しかった。
国費留学の彼は成績が下がると、強制的に帰国させられると言った。
学費や生活費は国費で賄われるが、小遣いは自分で工面しなければならず、他の人が親からの仕送りを受ける中、彼には両親も兄弟もいなかった。
勉強のかたわらバイトで小遣いを稼がなければならず、なんとなく自分と共感するものがあった。
バイトの帰りに話すようになって、お昼も一緒に食べるようになってから、彼に益々惹かれるようになった。
彼の気持ちを聞いたわけではないが、一緒に居ることを嫌がった様子はなかった。
彼と会う回数が増える内に、彼に夢中になっていた。
彪に聞かれた時、はっきりと自分の気持ちを自覚した。
彼の魅力を話し、彼への気持ちを話した。
彪や新名に彼を紹介したいと思った。
彼が自分をどう思っているのか、男同士で付き合う事を彼がどう思うのか気になった。
国が違えば、考え方も違う。
同姓同士の付き合いを彼がどう認識しているのか分からない以上、迂闊に気持ちを伝えるわけにはいかない。
中国では1997年に同性愛が合法となった。そう言う点では、日本より理解はあるかもしれない。
中国は国民から最も要請の多い立法の一つが同性婚の合法化だと認めていた。
中国には同性愛者が4000万人居り、その内3000万人が男性だと見積もられている。
それでも、同性婚や同性愛に嫌悪感を持つ人は少なからず居るわけで、彼の考えがどちらなのか分からない以上、彼に告白するのは怖かった。
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