恋の始まり

1/1
前へ
/159ページ
次へ

恋の始まり

深夜の道をマンションまで歩いた。 唇を重ねた星轩 (シンシュエン)の顔を思い出す。 初めてだと言った星轩 (シンシュエン)の唇に、何度もキスを繰り返し、触れた唇の柔らかさに夢中になった。 微かに震える肩を抱き、熱く(たぎ)る熱情を押し付けると、身体じゅうの細胞がわき立つような昂ぶりを覚えた。 こんな気持ちは初めてだった。 マンションへ着いて、部屋に戻っても興奮した身体はなかなか治らなかった。 シャワーを浴びてベッドへ入ると、星轩 (シンシュエン)の顔が目の前に浮かび、柔らかな唇がちらつき、星轩 (シンシュエン)の声が耳元に聞こえて眠れなかった。 まるで初めて恋をした中学生のように、胸がドキドキする気分が嬉しいような照れ臭いような、なんとも言えない気持ちだった。 ほんとんど眠れないまま朝になり、部屋を出ると(あや)がキッチンで朝食の準備中だった。 顔を洗ってキッチンへ行くと、(あや)が明るい顔で僕を見た。 驚いた顔で僕の顔を見つめている。 「・・・・・なに?」 「(たくみ)君・・・・・どうしたの?」 「・・・・・何が?」 (あや)がどうしてそんな事を聞くのか分からない。 何かいつもと違うのだろうか・・・・・ 不安が一気に膨らんでいく。 「(たくみ)君の顔、変だよ。目も赤いし、唇が腫れてる・・・・・」 そうか・・・・・あれだけ何回もキスすれば当然唇だって、腫れるだろ。 星轩 (シンシュエン)も今頃・・・・・ 「なんでもない、ちょっと眠れなかったんだ」 「何かあったの?」 「実は・・・・・彼と付き合う事になったんだ。ゆうべバイトが終わってから、あいつに告白された・・・・・」 「(たくみ)君、最高じゃん!良かったね。向こうも好きだったんだ」 「なんかさ、嬉しくて眠れなかったんだ」 「そうなんだ・・・・・だから、唇もそうなったんだ」 (あや)が僕の顔を嬉しそうに見ていた。 (あや)や新名が良かったと言ってくれることが、心から嬉しかった。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加