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恋の始まり
深夜の道をマンションまで歩いた。
唇を重ねた星轩 の顔を思い出す。
初めてだと言った星轩 の唇に、何度もキスを繰り返し、触れた唇の柔らかさに夢中になった。
微かに震える肩を抱き、熱く滾る熱情を押し付けると、身体じゅうの細胞がわき立つような昂ぶりを覚えた。
こんな気持ちは初めてだった。
マンションへ着いて、部屋に戻っても興奮した身体はなかなか治らなかった。
シャワーを浴びてベッドへ入ると、星轩 の顔が目の前に浮かび、柔らかな唇がちらつき、星轩 の声が耳元に聞こえて眠れなかった。
まるで初めて恋をした中学生のように、胸がドキドキする気分が嬉しいような照れ臭いような、なんとも言えない気持ちだった。
ほんとんど眠れないまま朝になり、部屋を出ると彪がキッチンで朝食の準備中だった。
顔を洗ってキッチンへ行くと、彪が明るい顔で僕を見た。
驚いた顔で僕の顔を見つめている。
「・・・・・なに?」
「匠君・・・・・どうしたの?」
「・・・・・何が?」
彪がどうしてそんな事を聞くのか分からない。
何かいつもと違うのだろうか・・・・・
不安が一気に膨らんでいく。
「匠君の顔、変だよ。目も赤いし、唇が腫れてる・・・・・」
そうか・・・・・あれだけ何回もキスすれば当然唇だって、腫れるだろ。
星轩 も今頃・・・・・
「なんでもない、ちょっと眠れなかったんだ」
「何かあったの?」
「実は・・・・・彼と付き合う事になったんだ。ゆうべバイトが終わってから、あいつに告白された・・・・・」
「匠君、最高じゃん!良かったね。向こうも好きだったんだ」
「なんかさ、嬉しくて眠れなかったんだ」
「そうなんだ・・・・・だから、唇もそうなったんだ」
彪が僕の顔を嬉しそうに見ていた。
彪や新名が良かったと言ってくれることが、心から嬉しかった。
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