蛍火(ほたるび)

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「それにしても、ディナーまでご馳走(ちそう)になるなんて申し訳ないですね。着替えなくて大丈夫ですか?」 「ええ、皆さん観賞会にいらした方々で、浴衣をお召しです。内輪(うちわ)の集まりですから、どうぞお気を楽に」  オーナー社長を囲む内輪の集まりだからこそ、こちらは気を遣うのだが……、柏木はそう考えながら密かに苦笑した。とはいえ、支配人としては、他に言いようもないだろう。  翠は小森のすぐ後を歩いていたが、途中で歩調を緩めて柏木と並ぶと、声をひそめて言った。 「これから食事をご一緒する大隈(おおくま)社長のことですが……、少し強引なところがあるので、不快にお感じになることがあるかもしれません。でも、本当は気さくで面倒見のいい方なんです」 「心配要りません。多少性格に難はあっても、彼が度量(どりょう)の大きな人物だということは承知しています。僕に何を期待しているのかも、大体察しがついているし、うまくやりますよ」 「すみません。ありがとうございます」
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