蛍火(ほたるび)

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「まあ、いいじゃないか、澤村さんも一緒なんだし。こちらは鳥羽(とば)雄二氏と細君(さいくん)の敏子さん。相模原でアミューズメントパークを経営しているんですが、多分、施設の名前はご存じないでしょう」 「これは手厳(てきび)しいな。鳥羽です。よろしくお願いします」  鳥羽は源太郎の知人で、年齢は五歳年下、源太郎のぞんざいな口調は、長年にわたる親密な交友関係の現れでもあった。 「こちらは不動産仲介業をやっている刈谷実(かりやみのる)氏と妻の優花(ゆうか)さん。お住まいをお探しの際はぜひ声をかけてやってください。掘り出し物の物件を見つけてくれますよ」 「よろしくお願いします」  刈谷は働き盛りの四十代、源太郎が彼の手腕(しゅわん)を買って、交友を深め始めたところだろうと思われた。 「さ、こちらへどうぞ」  胡蝶の間は二十平米(へいべい)ほどの広さで、正面の窓からは、蛍の飼育されている渓流を見下ろすことができた。 「すばらしい眺めですね。斜面に立っていて渓流がまわり込んでいるから、高さの割に水辺が近い。これなら窓辺にも蛍が飛んでくるでしょう」
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