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「あの企画書に書いてあるのは、よそでやってることの真似ばかりだ。今さら言うのもなんだが、開業当初からコンセプトがなっていなかった。あそこでしかやれないことを考えるべきだったのに、あそこでやれることを選んでしまったのさ。競合する施設ができたら業績ががた落ちになったのはそのせいだ。じゃんけんで後出しされているようなもんだよ。勝てるわけがない。
うちの蛍の人工飼育は、天然の湧き水とこの傾斜があるから工事費が抑えられた。他社が真似ようとしても、投資額は三倍以上になる。後発でそれじゃ算盤が合わない、そこまで試算してあったから、俺は澤村さんの企画に乗ったんだ。どうしても追加の投資をして欲しいと言うんだったら、あの場所でしかやれないアイデアを盛り込んだ企画書を出し直してくれ。
まあ、正直なところ、これ以上傷口が広がらないうちに事業をたたむのが最善に思えるがね。敷地の売却とかは、この刈谷君がうまくやってくれる。なかなかの遣り手だよ。同業者からも一目置かれているくらいだ」
反論の言葉が見つからずに、鳥羽は不満げな顔で黙り込んだ。
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