蛍火(ほたるび)

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「どうしたのかしら、お客様をほったらかしにして……。すみません、ちょっと見てまいりますね」  さくらが出てゆくと、鳥羽が刈谷に言った。 「さすがの大隈源太郎も、さくらさんが相手だと形なしだな」 「銀座の一流クラブを()()りしていたというだけのことはありますね」 「大隈社長、ちょっと様子が変でしたね。急に機嫌が悪くなったし、顔色も悪かった」  前園が声をひそめて言うと、柏木も小声で答えた。 「うん、部屋を出る時も、少し足がもつれたように見えたけど、大丈夫かな……」  突然、階下の遊歩道の方から、さくらの叫び声が聞こえてきた。 「誰か、救急車を、早く!」  柏木達が駆けつけると、さくらは遊歩道に通じる石段の途中で、源太郎を抱きかかえてうずくまっていた。源太郎は頭部から激しく出血し、全く意識がなかった。  彼は直ちに救急車で病院に搬送(はんそう)されたが、転倒時に石段で頭部を強打したことによる死亡が確認された。
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