蛍火(ほたるび)

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「ええ、先月人間ドックに入ったんですが、悪いところは何も見つかりませんでした」 「昨晩の酒量は?」 「当人は飲み過ぎたかもしれないと言っていましたが、倍の量を飲んでも平気だったと思います」 「そして、柏木さんと前園の話では、ご主人は食事の途中で急に不機嫌になり、体調も悪そうだった、と」 「はい」 「となると、源太郎氏の失神が何らかの人為的な要因、薬物等によって引き起こされた可能性は排除できません。そこで、昨夜彼と夕食を共にされた方々にこうしてお集まりいただいたというわけです」 「あの、すみません、ちょっと失礼します」  小森は右手でみぞおちのあたりを押さえながらそう言うと、足早(あしばや)に部屋を出ていった。 「小森支配人、急にどうされたんでしょう?」と堂島がさくらに尋ねた。 「狭心症(きょうしんしょう)の薬を飲みに行ったんだと思います。きっと、警察の方がいらして緊張したんです」 「心臓が悪いんですか?」
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