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柏木は考え込みながら窓の外に目をやった。窓の外では二度目の蛍の乱舞がピークを迎えていた。不意に、一匹の蛍が群れを離れると、窓辺に近づいてきた。蛍はガラスにぶつかりそうなところで向きを変え、横に波打つように飛んで姿を消した。
―酵素が媒介する酸化反応、ルシフェリンにルシフェラーゼ……。なるほど、そういうことか!
柏木はひそかにうなずくと、堂島に声をかけた。
「堂島さん、他に何か確認の必要なことがおありですか?」
「いえ、これで十分です。皆さん、夜分遅くまでご協力いただき、ありがとうございました。澤村さん、柏木さん、よろしければ車でお送りしますよ」
「ありがとうございます。でも、まだ電車で帰れますから……」
「酔客が増える時間帯だし、夜道も心配だ」と柏木が翠に言った。
「その通り。遠慮は無用です」
堂島と前園、柏木、翠の四人は、本館の入り口前でパトカーに乗り込んだ。
「柏木さん、先ほど何か気づかれたようですね」
エンジンをかけると、堂島はさっそく柏木に声をかけた。
「さすがは堂島さん、すべてお見通しだ」
柏木は微笑みながら前園にメモを差し出した。
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