8人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「前園君、ここに書いた物質に対象を絞って料理の検査をやり直してもらえるかな? 無事に検出できれば、後は簡単な実験を一つ済ませるだけで事件は解決だ。それから澤村さん、明日の朝一番にホテルの厨房に行っていただけますか」
「厨房ですか?」
「ええ。仕上げの実験のための、特別料理を発注したいんです」
柏木は料理の内容を説明し始めた。
翌日の午後八時、柏木たち四人は、再び胡蝶の間でさくら、小森とともにテーブルを囲んでいた。
「葬儀が終わったばかりでお疲れのところにも関わらず、お時間をいただいて恐れ入ります。捜査の最終結果をご報告させていただこうと思いまして」と堂島が言った。
「ご苦労さまです。それで、結果というのはどのような?」
「結局、ご主人の死亡事故に関して、その原因となるような薬物は、どこからも検出されませんでした。つきましては、本日をもって捜査を終了させていただくことになります」
「そうですか……、わかりました」
「すみません、完全に僕の見込み違いでした」
柏木はそう言って頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!