蛍火(ほたるび)

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「前園君、ここに書いた物質に対象を(しぼ)って料理の検査をやり直してもらえるかな? 無事に検出できれば、後は簡単な実験を一つ済ませるだけで事件は解決だ。それから澤村さん、明日の朝一番にホテルの厨房(ちゅうぼう)に行っていただけますか」 「厨房ですか?」 「ええ。仕上げの実験のための、特別料理を発注したいんです」  柏木は料理の内容を説明し始めた。  翌日の午後八時、柏木たち四人は、再び胡蝶の間でさくら、小森とともにテーブルを囲んでいた。 「葬儀が終わったばかりでお疲れのところにも関わらず、お時間をいただいて恐れ入ります。捜査の最終結果をご報告させていただこうと思いまして」と堂島が言った。 「ご苦労さまです。それで、結果というのはどのような?」 「結局、ご主人の死亡事故に関して、その原因となるような薬物は、どこからも検出されませんでした。つきましては、本日をもって捜査を終了させていただくことになります」 「そうですか……、わかりました」 「すみません、完全に僕の見込み違いでした」  柏木はそう言って頭を下げた。
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