蛍火（ほたるび）

「ゲンゴロウの強精(きょうせい)効果の正体はシルデナフィルクエン酸塩、ＥＤ治療に用いられている薬品です。こんなものを添加した食材を健康食品として売りつけるなんて、ひどい薬局があったものだ。この薬には、一緒(いっしょ)に服用してはならない、危険な飲み合わせ、併用禁忌(へいようきんき)とされる薬品があるんです。硝酸剤などの狭心症の治療を併用すると、相互作用と呼ばれる薬の効きすぎが起こって、過度の血圧低下が発生します。狭心症の治療薬を服用している小森支配人は、当然この禁忌を知っていた……。さくらさん、あなたと彼は愛人関係にありますね？」
　さくらは不意を突かれてうつむいた。