蛍火(ほたるび)

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「残りの課題は、先程も申し上げた通り、さくらさんが共犯者かどうかを明らかにすることでした。そこで、澤村さんを通じて中華料理のシェフにお願いして、佛跳牆を作ってもらったんです。さくらさんが共犯者だったら、佛跳牆を口にした時、小森支配人と同じような行動を取ったでしょう。三日もたっているんだから、硝酸剤が残留しているはずはありませんが、併用禁忌のことを知っていて、平静でいられるとは思えません。目の前であんなに(あわ)てている人物がいたら、なおさらだ。堂島さん、いかがでしょう?」 「ええ、私も同意見です」  堂島は小森に歩み寄って逮捕状を示した。 「小森慎一、薬物を使用して大隈源太郎氏を事故死させた疑いで逮捕する」  堂島は小森に手錠をかけ、室外で待機していた若手の刑事に引き渡した。 「連れていけ」  小森は刑事に連行されて部屋を出ていった。 「小森が主人を、あんな気の小さい男が……」 「これは私の推測に過ぎませんが」  堂島が呆然(ぼうぜん)としているさくらに言った。
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