握手会

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握手会

「ところが?」ピーチは眉をひそめて聞き返した。 「握手会で惨劇が起きてね」  マックロードの表情が険しくなった。   「えェ、握手会で?」 「ああァ、地下アイドルだからセキュリティも甘かったんだろうが。ストーカーがファンの中に紛れていたんだよ」 「ストーカー?」 「ああァ、まさに一瞬の出来事だった。そいつが突然、(ふところ)から凶器を出してメイの胸へ」 「え、マジで?」 「オレたちファンの前で刺されたんだ」 「ううゥ!」 「一瞬で握手会は阿鼻叫喚さ。悲鳴と怒号の中、すぐにオレは倒れたメイに駆け寄ったが手の(ほどこ)しようもなかったんだ」 「……」 「血まみれの彼女はオレの腕の中で息を引き取ったんだ」   「そう、マックロード先生にもそんなツラい過去が」 「まァな。地下アイドルは、人気者と危険が隣り合わせだ。人気が上がるほどおかしなファンや異常なストーカーが増えていくからなァ」 「そうねえェ。ファンとアイドルの距離が近い分、それだけ危険が増えていく因果な商売ね。地下アイドルも」 「まァな。さァ、この辺りで良いのか?」 「うん、ありがと。先生。チューしてあげるわ!」  ピーチはマックロードの頬にキスをした。   「フフゥン、ありがとう。じゃァお礼にお小遣いをあげないとな」  マックロードは財布ごとポンとピーチへ渡した。 「キャー、こんなに。だから好きなの先生!」  またチュッチュッとマックロードの頬にキスをした。キスの嵐だ。 「おいおい、わかったから勘弁してくれよ」  だがマックロードの顔は嬉しそうにニヤついていた。
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