sara

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目の前には水が。 あのときのように空を目指して泳ごうと。 その時だ。 空から手が伸びてくる。 あのしなやかな拳が。 そして拳は親指を立てる。 俺は必死に泳いで手を伸ばして親指を立てて答える。     確かめるように人差し指を伸ばすと、向かいの拳が人差し指を伸ばしてくれる。 小指が開くと俺も小指を開く。 嬉しくなって手に近づきながら中指を伸ばすと中指が伸びる。 二つの手は今にも触れそうな距離だ。 最後に薬指を伸ばして開きあった手が掴み合った。 その瞬間、目の前は真っ黒な世界に。 「えっ!?」  水から顔が出ると俺の手を引いていたのは黒木さんだった。 「…なにやってる…ですか?」 「それはこっちのセリフです。」 黒木さんは俺を引き上げた。
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