パーン・パニックス

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 避難所は近所の小学校の体育館に設置されていた。蓮人は避難所運営リーダーの指示に従い、男性単身世帯者のエリアに腰を下ろす。与えられたスペースは比喩を抜いて「起きて半畳寝て一畳」程度。 蓮人が会社を出てから、ずっと歩き放しで座るのはこれが初めてのこと。 やっと、気分を落ち着かせることが出来たのである。  流石に会社は明日から休業だろう、瓦礫と噴砂に塗れたオフィス街を見れば一目瞭然。 それにも関わらずに「明日も通常勤務だから頑張って会社に来てくれ」と会社から連絡が来ようものなら、サイレント退職願の提出待ったなし! こんなブラック企業なんかにいたくねぇよ! 人の心を持った会社に向かってリクルート希望! と、言った下らない冗談を脳内で妄想しているうちに会社からスマホにメールが届いた。要約すると「当面の間、自宅待機」と言う文面が長々と。蓮人は「その自宅が倒壊してるんだよ! 俺は!」と心の中で叫びながらスマホを布団に投げつけてしまう。 妄想から現実へと立ち戻った蓮人は、不貞腐れたように寝に入ろうとした。しかし、避難所と言う慣れない環境にいるせいか、なかなか眠りに就くことは出来ない。それは周りも同じである。 蓮人が避難所に入ってから数時間後…… 深夜二時を迎えたその瞬間、再び「あの音」が避難所にいる者全員のスマホから鳴り響く。 〈緊急地震速報です、強い揺れに警戒して下さい。緊急地震速報です、強い揺れに警戒して下さい〉 ぐらっ…… また来たというのか! しかもこんな深夜に! 避難民達がそう考えているうちに地が揺れる。余震だから軽いものだろう、皆そう考えているのか地に伏せながら揺れの収まりを今か今かと待つ。 しかし、その考えは甘かった。
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