パーン・パニックス

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 蓮人はやっとのことで会社社屋からの脱出に成功した。階段の寿司詰め状態が海苔巻き数個余り状態になるまで一時間、その間に余震が起こることなくビルも無事で安堵する。  その間に遠方の実家に電話をかけて無事を伝えようとするが、スマホが使えない。おそらくは輻輳防止のために電波に制限をかけているのだろう。SNSも通じない。メールを送信しても「送信中」の画面が一分弱続いた上で「送信できませんでした」と通信途絶を知らさせるのみ。 それが正しいかのように消防車や救急車のサイレンが鳴り止まない。 火災や怪我人が増えている証左である。  駅には黒山の人集りが出来ていた。しかし、黒山は改札前で糞詰まり。 改札前では駅員が懸命に「ただいま、列車は地震のため運行停止でーす!」と叫んでいる。 余震での脱線事故が起こる可能性を考えれば当然のこと。諦めて回れ右である。 しかし、列車が止まっていることに納得がいかないのか駅員に怒号を飛ばす者が多い。窮すれば濫すとはよく言ったもの。蓮人は「ああはなりたくない」と考えながら黒山を掻き分けて駅を後にするのであった。  蓮人は駅前のタクシー乗り場へと向かった。しかし、タクシーは来ずに黒山の列があるだけ。 ミニパトでタクシー乗り場に訪れた警察官は「交通規制が発令されましたー! タクシーは来ませーん!」と皆に告げる。ここでも駅中と同じもので、警察官に怒号や罵声を飛ばす者が多い。何を言われても大震災時の交通規制の解除に関してはどうにもならない。 罵声や怒声に対して「分かって下さい」「納得して下さい」と言い、諌めることしか出来ないのである。 線路も道路も絶たれてしまった…… こうなれば歩いて帰るしかないか。 蓮人は悄然としながら徒歩での帰路に就くのであった…… ただ、今日に限っては蓮人に限らず同じように徒歩での帰路に就いた者が多かったことを忘れてはならない。
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