パーン・パニックス

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 蓮人はコンビニへと戻っていく。同じ豪運の元、生き残っている店員の様子が気になったのである。 店員は虎に襲われると言う危機を乗り越えて落ち着いたのか、店内の掃除を行っていた。蓮人の姿を見つけるなりに驚いたような顔をした後、駆け寄ってくる。 「あ、あの……? 虎に襲われたのでは?」 アンタの代わりに襲われたようなものだよ! 蓮人はそう言いたくなるが、こんな時に怒鳴るのも体力の無駄だと思い怒りを鎮める。そして、先程の虎に関しての説明を行った。 「ああ、そうなんですか。動物園から虎がぁ…… ライオンとかゾウとかは逃げてないんですね」 「他の動物が逃げてれば、言うと思いますが」 「そうですね。他の動物が逃げてたら大パニックですよね」 地震が起こっている時点で大パニックである。それは瓦礫だらけの街中を見ていれば分かる筈だ。蓮人は店員を呆れ含みの目で見てしまう。 「全く、虎が来るならまだ火事場泥棒の方がマシですよ。言葉通じますからね」 地獄の沙汰も金次第ってか? この大震災の中で金がどこまで役に立つのやら…… 蓮人は苦笑いを浮かべてしまう。 「日が暮れる前に避難所に行かないと。あ、そうだ。これ、お礼だと思って」 そう言うと、店員はレジ裏の台車より菓子パンを一個取り蓮人に差し出した。 「店のバックヤードに入れといた分です。店に出していた分はもう火事場泥棒みたいに雪崩込んできた人達に持っていかれてしまって…… バックヤードにあった分を近くの避難所に持っていこうとした矢先に虎が来て…… 意味がわかりませんよ!」 確かに意味が分からない。一緒に泣きますか? 蓮人は菓子パンを受け取ると、乱暴に噛み千切ることを繰り返して完食するのであった。
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