怪獣の花嫁

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・怪獣が現れ大パニックの中、親父は落ち着いた様子で「言ってくる」と立ち上がり――。  俺は親父を呼び止めた。 「待て、言ってくるってなんだよ! 行ってくるの間違いじゃないのか、行ってくるだろ?」  違った。親父は怪獣を話し合い、何と説得に成功した。  怪獣が去った後、親父は言った。 「冷静ではいられない状況に直面した時、自分より動揺した人が近くにいると、逆に落ち着くことも……そう聞いたことがある。もしも将来、お前にパニックが訪れたら、周りを見回してみるといい。自分よりパニックな人を見れば、どうにかなるだろう」 ・高嶺の花と憧れていた彼女に告白された!動揺のあまり、なぜかお断りしてしまい!?  そんなアドバイスを親父から受けていた俺だったが、不幸にもそのときは周りには自分よりパニックな人間はいなかった。二人きりの場面で告白されたからだ。俺はなぜかお断りしてしまった。そしたら相手は激怒した。俺はビックリして逃げ出そうとして、転んだ。その後のことは、もう何も覚えていない。 ・同窓会に現れたあいつを見て、内心パニックを起こす。たしかに殺したはずなのに!  自分を振った男を殺してしまったときもパニックになったが、その男に同窓会で再会した今の方がパニックだ。皆は落ち着いている。何がどうなっているのやら……いけない、このままだと怪獣に変身してしまう。勇気ある見知らぬおじさんの語りで、人間に戻ることができたのに! いや、そんなことを今になって言ったところでしょうがない。いかん……理性が吹っ飛んできた。このままだと……まあいいや、蘇ったあいつ諸共、皆を押し潰してやるまでだ。  そう決めたときだった。 「お嬢さん、お待ちなさい」 「あ、あなたは!」  私に声を掛けてきたのは、怪獣になった私を救ってくれたおじさんだった。おじさんは言った。 「私は、お嬢さんが殺した男の父親です。その節はお世話になりました」  いや、別にお世話したわけじゃないんだけど、と私は謝った。 「お父様、ごめんなさい、私、本当は殺したくなかったんです」  彼のお父様は私を許してくれた。  それだけではなかった。 「実は、あなたにお願いがあるのです。死んだ息子が復活したのには理由があります。息子は怪獣の神によって、怪獣に変身する体に生まれ変わってしまったのです。このままですと息子は怪獣になってしまいます。それを防ぐのは、お嬢さん、あなただけです。息子に再び告白してやって下さい。そうすると、怪獣に変身してしまう息子の呪いは解けます」  どんな呪いなんだよ! と思ったが、このおじさんに言われると断れない。愛した男のお父様でもあることだし、いっちょやってみるか! 「分かりました。もう一度、告白します」  告白は成功し、私たちは結ばれた。今度、子供が生まれる。怪獣が生まれてきたらどうしよう? でも、今のところは幸せだから、これでいい。  そうだ、いやいや期に備えて、義理のお父さんから怪獣を懐柔する方法を聞いておかないと。でも、子供に話が通じるかな?
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