好きな色は？

好きな色は好きなままで

　やがて、毎日のようにお絵描きの時間になった。いつもは、みんなそれぞれ自由画帳を持ってきて、そこに絵を描く。でも今日は、そうじゃなかった。

「今日は、みんなで大きな1枚の紙に描いてみようか」
　そんな先生の言葉に、みんな声を上げて喜んだ。先生が持ってきたのは、薫達が手を広げても届かないくらい大きな紙。それを床に置いて、みんな好きなように絵を描く。

　薫も、いつものように黒を使って絵を描こうとした。でも、
「薫、黒は使うなよ。誰も使ってないんだから。他の色使いなよ」
「え、でも……」
「薫くんの絵、いつも真っ黒だもん。黒くなるのは嫌だよ」
　みんなにそう言われて、薫は悲しくなった。

「黒で絵を描くのって……変なの？」

「そうだよ、変だよ」
「みんな綺麗な色使ってるのに」

　でも1人、それを否定する子が居た。