好きな色は好きなままで

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「変じゃないよ!」 「え?」  声を掛けてくれたのは、香澄(かすみ)だ。 「薫くんが黒を好きなのは、変じゃないよ。わたしはね、白が好き!」 「白?」 「うん!白ってね、どんな色にでも染まれるんだよ。すごいでしょ!」 「黒は染まれないよ」 「でも、たくさんの色を混ぜたら、黒になるでしょ?唯一無二って感じで、すごくない?」  香澄は笑って、白いクレヨンを握った。 「ねぇ、薫くん。ここを、黒で塗りつぶしてみて」 「うん……」  香澄に言われた通り、薫は黒いクレヨンで紙を塗りつぶした。その上に、香澄が白いクレヨンで何かを書き足していく。  出来上がったのは、白い星と月が輝く、夜空の絵だった。 「ほら!黒も、綺麗な色になるんだよ!」 「すごい……ありがとう、香澄ちゃん!」  すると、他のみんなも、白や黒を握って、寄ってきてくれた。 「ごめんね、薫くん、黒は変とか言って」 「一緒に描こうぜ!」  それから、みんなでひとつの紙に、ひとつの絵を描きあげた。黒や白、赤や黄色や茶色。カラフルな色で、綺麗な絵ができた。  やがて、みんな薫に口を出さなくなって行った。  薫は今も、黒い色が好きなままだ。
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