好きな色は好きなままで

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好きな色は好きなままで

 外から楽しそうな声が聞こえてくる。その声に耳を傾けながら、この保育園に通う児童、(かおる)はクレヨンを使って絵を描こうとしていた。  自分のロッカーから、自由画帳とクレヨンを取り出し、白紙のページを開いて、クレヨンの箱を開ける。中は綺麗だ。全ての色が揃っている。  気になることといえば、黒色だけ短いこと。  薫の自由画帳は、ほとんど黒い色で描かれていた。  いつものように黒いクレヨンを手に取り、描き始めた。すると一人の男の子が、薫に駆け寄ってきた。 「うわ、また黒で描いてる!」 「柚希(ゆずき)くん……」  柚希は、薫の自由画帳をペラペラと捲り、それから薫を見た。 「なぁ、黒って全然綺麗じゃないのに、なんで黒で描くんだ?赤とか、青とか使えよ」 「だって僕、黒が好きだもん」 「へー、変なの」  それだけ言って、柚希は外へ行ってしまった。薫の中には、柚希に言われた言葉がずっと渦巻いていた。
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