保の謎

1/3

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

保の謎

そして、僕を香澄ちゃんの所まで連れて行ってくれた。 「いらっしゃい、千夜くん。山村先輩も待ってたわ」 植物に囲まれた緑豊かな明るい部屋。 僕が香澄ちゃんの部屋に入った時の印象は、そんな感じだった。 「香澄、悪いな。俺は直ぐ行かなきゃならねー。山村のことを頼む」 「…そう、わかったわ。山村先輩、そこに座って?今、ハーブティー用意するわ」 香澄ちゃんが奥に引っ込む。 「山村、後は俺のプロジェクトの仕事だ。さっきのことは早く忘れた方が良い」 保はそう言うと、僕の頭を撫でてくれて、部屋を出て行っちゃった。 保…何だか悲しそうだった。 僕がボーッと保が出て行ったドアを見てると、香澄ちゃんが2人分のハーブティーをトレーに乗せて戻って来た。 「お待たせ。熱いから、フーフーしてから飲んでね」 「ありがと、香澄ちゃん…」 僕は言われた通り、カップから湯気が出ているハーブティーにフーフー息を吹き掛けるとひと口飲んだ。 …何だか不思議な味。 でも、僕は少しずつ心が落ち着いてきた。 「千夜くんから、山村先輩が大変な目に遭ったって通信機で聞いたけど…何かあったか訊いても大丈夫…?」 香澄ちゃんが僕と同じようにハーブティーを飲みながら遠慮がちに訊く。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加