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保の謎
そして、僕を香澄ちゃんの所まで連れて行ってくれた。
「いらっしゃい、千夜くん。山村先輩も待ってたわ」
植物に囲まれた緑豊かな明るい部屋。
僕が香澄ちゃんの部屋に入った時の印象は、そんな感じだった。
「香澄、悪いな。俺は直ぐ行かなきゃならねー。山村のことを頼む」
「…そう、わかったわ。山村先輩、そこに座って?今、ハーブティー用意するわ」
香澄ちゃんが奥に引っ込む。
「山村、後は俺のプロジェクトの仕事だ。さっきのことは早く忘れた方が良い」
保はそう言うと、僕の頭を撫でてくれて、部屋を出て行っちゃった。
保…何だか悲しそうだった。
僕がボーッと保が出て行ったドアを見てると、香澄ちゃんが2人分のハーブティーをトレーに乗せて戻って来た。
「お待たせ。熱いから、フーフーしてから飲んでね」
「ありがと、香澄ちゃん…」
僕は言われた通り、カップから湯気が出ているハーブティーにフーフー息を吹き掛けるとひと口飲んだ。
…何だか不思議な味。
でも、僕は少しずつ心が落ち着いてきた。
「千夜くんから、山村先輩が大変な目に遭ったって通信機で聞いたけど…何かあったか訊いても大丈夫…?」
香澄ちゃんが僕と同じようにハーブティーを飲みながら遠慮がちに訊く。
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