保の謎

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「香澄ちゃん。その時、保が言ったんだ…。『あんたは俺みたいな目に遭うなよ』って…。どういう意味か解る…?」 「『俺みたいな目に遭うなよ』…?いいえ、解らないわ…」 どうやら香澄ちゃんでも知らない事があるみたいだ。 僕が、言わない方が良かったかなって思った時、香澄ちゃんがカップをテーブルの上に置いて話しだした。 「千夜くんって…私には何も言ってくれないけど時々、憂いを帯びた目をするのよね。彼自身も気付いていないみたいだけど…」 「ウレイ???」 「辛い、切ないっていう意味よ」 香澄ちゃんの声が暗くなった。 僕は胸がキューッと絞めつけられる思いがした。 保…何で、そんな目をするんだろう…?? 過去に何かあったのかなぁ…。 僕が知ってる保は、いつも強くて格好良くて、僕の中ではヒーローみたいな人だ。 でも、1番近くで保を見てる香澄ちゃんが言うんだもん。 何かあるのは間違いない。 でも、保が僕と同じ目に遭ったなんて考えられない! 保の謎だ…。 「私は話してくれるのを待ってる。何か訊いちゃいけないような気がして…」 香澄ちゃんは、そう言うと大きくなってきたお腹を撫でた。 香澄ちゃんにも言わないんだもん。 僕に言う訳無いよね…。 いつの間にか、僕は自分が怖い目に遭ったことより、保の見えない心が気になっていた。
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