9人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「香澄ちゃん。その時、保が言ったんだ…。『あんたは俺みたいな目に遭うなよ』って…。どういう意味か解る…?」
「『俺みたいな目に遭うなよ』…?いいえ、解らないわ…」
どうやら香澄ちゃんでも知らない事があるみたいだ。
僕が、言わない方が良かったかなって思った時、香澄ちゃんがカップをテーブルの上に置いて話しだした。
「千夜くんって…私には何も言ってくれないけど時々、憂いを帯びた目をするのよね。彼自身も気付いていないみたいだけど…」
「ウレイ???」
「辛い、切ないっていう意味よ」
香澄ちゃんの声が暗くなった。
僕は胸がキューッと絞めつけられる思いがした。
保…何で、そんな目をするんだろう…??
過去に何かあったのかなぁ…。
僕が知ってる保は、いつも強くて格好良くて、僕の中ではヒーローみたいな人だ。
でも、1番近くで保を見てる香澄ちゃんが言うんだもん。
何かあるのは間違いない。
でも、保が僕と同じ目に遭ったなんて考えられない!
保の謎だ…。
「私は話してくれるのを待ってる。何か訊いちゃいけないような気がして…」
香澄ちゃんは、そう言うと大きくなってきたお腹を撫でた。
香澄ちゃんにも言わないんだもん。
僕に言う訳無いよね…。
いつの間にか、僕は自分が怖い目に遭ったことより、保の見えない心が気になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!