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保と先輩の事
「保ー、先輩って佐藤先輩のことでしょー?」
僕がそう言った途端に保の目が辛そうな、悲しそうな目になった。
あー、香澄ちゃんが言ってたウレイをおびた目って、この事かぁ…と僕まで悲しくなった。
「聞こえたのか?それとも鈴木から聞いたか?」
保は目と違って怖い声で言った。
まるで、そうしないと自分がダメになっちゃうって言いたいように。
僕は保を見上げたまま言った。
「両方だよう。でも鈴木くんもショーサイまでは知らないって言ってたよう。保ー、佐藤先輩と何があったのー?」
「人の傷口に塩を塗るような事を訊いてきやがって…!」
保は怒ったようにそう言うと、しばらく黙って僕を睨んでたけど僕も保から目を離さなかった。
この人の事を全部知りたい。
僕に出来る事は無いかもしれないけど…。
しばらくして、目を離したのは保の方だった。
「…あんたには負けたよ。ただし、今から言う事は絶対誰にも言うなよ」
保はそう言うと又、窓の方を向いた。
僕は保の横まで来ると、保を見上げた。
保は泣きそうな、小さな子供のように僕には見えていた。
「…告られたんだよ、先輩に。愛しているって。だが、俺は迫って来た先輩を殴って逃げた。先輩のことは、ライクだったからな…」
保は部活の時、僕より先輩と仲が良いのは知ってた…。
僕は2人が一緒にいるのを見てて、心がキューッと痛くなっていた。
「俺は直ぐに部活を退部した。だが、先輩はしつこかった。俺は何度、迫られても撃退する自信はあった」
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