ライター

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 連絡が途絶えた。  あの夜が最後だったらしい。  数ヶ月何もなく仕事に集中。昼休みに職場近くのカフェで一人カウンターに腰掛けるや隣に人が座り、無意識に顔を向けると井瀬だった。 「ん? ん!? はい!?」 「よっ」 「違う、そうじゃないから!!」  突然の登場に僕は驚き店内に響かないよう抑えた声で言うや「追いかけてて、誰かを。可愛い鳥がいてさ。ピヨピヨそこら辺歩いてるんだよ」とニコニコする様子がどうも怪しい。 「俺も〇〇に引っ越してさ。〇〇マンションって言うところの五階にいるんだけど鳥が可愛くて」  頬を赤くして恋バナでもしているような雰囲気だが僕からしたら全てが恐ろしくて隠し通すしかなかった。  〇〇。僕が住んでいる所。  〇〇マンション。僕がいる場所。  鳥。それは多分、僕のことだろう。  だが、井瀬の話は止まらない。 「きのみ、何が好きなのかな。朝は七時に飛び立って何処かで休憩しているのか。よく駅近くで見かけるんだ。それで、また飛んで――いつもの場所に行く。俺はその間、大人しく仕事してるんだけど……この時間になると“ここ来る”からよく来てたんだ」  ニコニコしていた井瀬の目が突然嗤わなくなる。僕をじっと見つめ、何か言いたそうだが分かっていると思われているのか言わない。 【傷つけて滅んだモノ】。  それを二度と失わないためか、彼は無意識に僕に執着する。本人は気づいてない、きっと……。 「で、今日何時に終わるの? 終わったら何処か食べに行こうよ」  その言葉に僕は小さく頷くしかなかった。                    【完】
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