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名前はポン太。友達がウサギやクマの縫いぐるみを抱きしめているのを見て、私はみんなとは違う動物の縫いぐるみが欲しいって思ったんだ。お父さんもお母さんも、みんなと同じようなかわいい縫いぐるみを薦めたけど、おじさんだけは「タヌキもいいじゃないか。町田家は変わり者の集まりだからな」って笑ってたっけ。
あのころのおじさんは、今の私と同じくらいの年齢だったのに、すごく老けて見えたなあ。
ごほっとせき込み、その弾みで肺の辺りが、ぎゅうっと引き絞られるみたいに痛んだ。
息をしようとしても咳が次々にこみ上げてくる。
「園子!ほれ、シクレソニドを吸引するのじゃ!」
ポン太、薬にも詳しいじゃん。
そういえば入院するときに一緒に連れて行こうとしたら、看護師さんに怒られたんだった。ぜんそくの子どもは縫いぐるみ厳禁ですって。
あのとき、泣いたなあ。ポン太と一緒じゃなかったら死んでもいいとか言っちゃってさ。
あれ?そのとき以来、ポン太は私の前からいなくなってて、お母さんもお父さんも何も言ってなかったっけ。私もそれほどポン太を恋い慕うってこともなかったか。
何か子どもって薄情だよね。ごめん、ポン太。
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