自称専門家

彼は、地震の専門家のコメンティターとしてテレビに出演していた。しかも、自信満々に、数日中に、関東大震災クラスの地震が来るとコメントしていた。
その証拠に、最近千葉県方面で微細な振動を気象庁が観測しているというデータを提示した。しかし、微細な地震というものは、毎日、日本のどこかで起きているもので、そのデータも、気象庁は世間に警告を促すようなデータではないと判断して、気象庁では問題視されていなかったものだが、その自称地震の専門家は、テレビを通じてもっともらしくこことここに活断層があるからと地震を予知した。
未だに、テレビの言うことを鵜呑みにする人は多い。ネットでは、その自称地震の専門家の経歴が調べられて、以前、富士山噴火を予言して、それを外して、世間からバッシングを受けたことがあると明らかになると、ネットではその地震予知を疑問視する者が多かったが、ネットに精通していない高齢者や情弱な人の中には、関東は危険だとパニックになって一部の人が本当に関東を離れ、地方に疎開を始めた。一人が動けば、二人三人と地方に逃げ出した。
過密な東京で地震が起きれば、交通網は麻痺し、簡単に帰宅困難者が出ることはわかっていた。これを期に過密な東京を離れて、地方でのんびりと過ごしたいという人も多かったようだ。そして、地震が来ると予言した自称専門家も自分で言っておいて、何もしないわけにはいかず、地方に逃げた。
だが、地震の専門家と自称してはいたが、その引越した先の地震は予知できなかったらしく、梅雨時と重なって水を含んだ裏山が急に崩れて、その濁流に家ごと飲まれて土砂に埋まって死んだ。