それは真夏のかげろうのような ―金木犀と神隠し6―

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   行ったのは、十分くらい歩いたとこにある甘味の店。   前に一度一緒に来たことがある。 「何する?奏人さん、前にここのあんみつ食べて美味しいって言ってたよな」 「そうだね。じゃあ、またそれにしようかな」 「俺は……抹茶クリームあんみつと、腹減ったから磯部餅。すいません」  頼んだものが来ると、奏人さんは微笑ましそうにテーブルの上を眺める。 「見てたら溶ける。ってあんたのはアイスは載ってないのか」 「ああ。でも冷たいうちに頂こう」  黒蜜を掛けて、匙ですくって。  奏人さんは口に入れると、しばらく味わう。 「……美味しい?」 「……うん。美味しいよ。甘いけど、甘過ぎなくて」  ふわりと、花が綻ぶみたいに笑う。 「そっか。良かった。……あ、俺の抹茶アイスも食べてみる?」  無意識に掬って差し出して、あ、これ『あーん』ってやつじゃ……って思ってると、奏人さんは不思議そうな顔する。 「あ、その……嫌じゃなければ、いいよ。このまま」 「ありがとう」  俺の差し出した匙に、品良く手を添えて口に入れるとゆっくり頷く。 「美味しい」 「……ん。あ、ここ磯部餅も美味しいから、食べられたら食べて」 「ああ。頂くよ」    
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