それは真夏のかげろうのような ―金木犀と神隠し6―

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 それからしばらく、同じような日暮れの時間に外に出ると無意識に、知った人影が居ないか周りを見るようになった。  見慣れた都会の風景には、その人は居るはずもないのだけれど。  奏人さんには、あの日のことは話していない。  これからも誰にも話すことはないだろう。  あれは、あの人が。  俺の初恋の人が、ほんのちょっと俺を独占したくて。  真夏のかげろうみたいに現れた、そういうものだったんだろうと思う。 『それは真夏のかげろうのような ―金木犀と神隠し6―』了
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