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Spy
大木茂。
彼はモロッコで活動する爆弾作りが趣味の、当該プログラマーだった。
それを突き止めたのが、庵野兄弟。彼らと大木は、大学の同期だった。
優秀なプログラマーには、独特のカラーがある。何となく、これはピカソのようだとか…そう、人間だけが気づける何か。それを読み解くセンスが、庵野兄弟にはあった。
この大木から、"ジェームズ"に辿り着けるかもしれない。その代償として黒岩が交換した資料は、弥彦管理官の情報だった。
弥彦のような公安の立場となれば、秘匿性が異常に高い。それをあっさりと渡してしまうとは。
咲耶は黒岩の所業に呆れてしまったが、その情報を欲しがったのが咲耶が愛してやまない茅鳥医師なのだ。"ジェームズ"の情報くらいくれてやる。
咲耶にとって、茅鳥医師は大学の先輩後輩とは言え、親子ほど歳が離れている。それでも咲耶は、茅鳥医師に救われて今日まで生きてこられた。そんな過去がある。
大した事じゃないと他人は言うかもしれないが、咲耶は、既におじいちゃんと言われてもおかしくないような茅鳥医師をとにかく愛してしまった。看護師として、秘書として、桃源郷の看板医師の茅鳥の背をずっと追い続けてきたのだ。
「茅鳥先生に、早く持っていってあげよう!」
咲耶は、茅鳥に褒められる自分を想像して身体が熱くなった。
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