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「この資料、何に使うんですか?」
咲耶が尋ねると、茅鳥はにっと笑うばかりで詳細は語ってくれなかった。それでも食い下がると、茅鳥は咲耶の頭をぽんぽんと撫でて心配を軽減してやった。
「まぁ、単なる身辺調査じゃよ。わしらの敵になるかどうか、見極めんとならんからな。」
そういうと、彼はいつもの山谷地域の訪問診療へと出掛けて行ったのだった。
茅鳥が訪問診療しに行った先には、いつものように大学から派遣されている間取医師がすでに診察を始めていた。
間取医師は、茅鳥と咲耶の出身大学とは異なる国立系の大学を卒業しており、それこそ黒岩や弥彦と同門であった。
かなり風変わりな女医の間取は、あまり人間の機微というのがわからない。仕事一筋、友達も居ない変な女だが、茅鳥は彼女の能力を評価している。何とか桃源郷に迎えたいと思っているのだが、医局の言いなりにあちこち行かされては四六時中働いていて交渉の余地もない。
そんな間取は、モデル並みの高身長で、容姿も淡麗だが根暗の上笑いもしないので、気づかれない。艶々した黒髪もかえって不気味で、いつも黒い服装を好む黒岩と並ぶと死神が二人揃ったように見える。
そんな二人は、ダブルジョーカーと呼ばれるほど、忌み嫌われるコンビだった。
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