Japan

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 「ATRか…。懐かしいなぁ。」 弟が呟くのには、すかさずフォローをする兄。  「あれはやり込んだよなぁ。俺達が警察官になろうと思った原点だからな。あの雨の音だけが効果音の中で事件を解決してゆく、あのスリリング!今の時代でも刑事ものであれを超えるゲームは無いと断言できる!あぁ、あんな刑事が理想なんだが…。やはり現実と虚実の谷は大きかったぞ、弟よ。」  「うん。でも、僕たちはあの中の分析警察官だと思えば、辛さも吹っ飛ぶよね。彼らより、僕たちが今は実際上だし。それにあの主人公って、何となく黒岩警視正が被るんだよね。ちょっとヒールな感じとか、完璧なルックスと頭脳とか。怖いけど、憧れる上司かな。」  「俺もそれは思うんだよな。気が合いますな、弟よ!」  「お兄様とは、通じあっていると常々感じてます!」  ひしと二人が拳を合わせてゲームのキャラポーズをキメたあたりで、入り口に呆れた黒岩が立っているのに気がついた。聞かれていた!と慌てて二人とも、今度は丁寧な敬礼を向けた。  「お前達の言うATRは、After The Rainだろ?あんな作品で警官になろうとは、呆れた奴らだ。あの主人公のモーションキャプチャーは俺が頼まれてやったんだから、似て当然だ。遊んでる余裕は、頼んでいた物の結論が出たんだな?さっさと教えろ。」  サラッと衝撃の事実を言われて愕然となる庵野兄弟は、目を白黒とさせて吹き出る汗とともに固まってしまった。
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