ATR

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 それから数日後、痺れを切らした弥彦管理官が庵野兄弟のところに足を運んできた。  「結果の報告が来ていませんが。どこまで調査出来ていますか?」  ちょっと苛ついているのを隠しつつ、弥彦が兄弟に詰め寄った。捜査が進展していないと言う事だろう。  「大変遅くなりましたが、どうやらATRは今回のモロッコ行きだけでなく、他の地域でも狙われているようです。巧妙にそうとは思われ無いように、操作しているようですが。ATRターゲットと考えたほうが自然なケースが幾つか挙げられます。」  弥彦を無視する庵野兄の代わりに、弟が説明を始めるとなぜか弥彦管理官の顔が曇った。  「モロッコ行き?どう言う事だ?それは検察庁でも限られた担当が調査している案件じゃないか。なぜそれを調べているんだ?」  怪訝な表情の弥彦に、庵野兄弟の方が驚いてしまった。  「弥彦管理官の言うATRとは、この案件では無いと言う事ですか?」  「当たり前だろう!今警視庁が調べているATRと言えば、Advanced Technology Corporationへのサイバー攻撃、すなわち我々警視庁へのハッキング案件だろうが!」  庵野兄弟が、呆然としながらもそっちかという腑に落ちながらも微妙な表情を露わにした。
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